当社の核酸デリバリー技術
- 疾患治療用の核酸を多くの組織で機能させる為に、核酸を細胞に届きやすい抗体、或いは抗体の断片に繋ぎ合わせて、筋肉、心臓、白血球などの細胞に核酸を届ける事ができる当社独自のプラットフォーム技術です。
- 抗体は、鉄分の輸送体であるトランスフェリンを細胞内に取込むトランスフェリン受容体(Transferrin Receptor = TfR = CD71)に対する抗体、或いは抗体断片を使います。TfR(CD71)は全身に発現しています。
- 抗TfR抗体、或いは抗体断片に核酸をリンカーで結合させた結合体(コンジュゲート)を投与します。
- 同コンジュゲートは、既存の核酸送達方法では送達できない組織に核酸を送達させることができます。
既存の核酸送達方法とは
- Adeno-Associated Virus Vector(AAV)法
アデノ随伴ウィルスをベクターとする核酸送達法。既に中和抗体を保有する患者には免疫原性、肝毒性の問題があり使用できない。人口の30%から40%が中和抗体を持っているといわれている。 - 脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle:LNP)法
非ウイルス性の脂質で核酸を内包する送達システムだが、直径が50 nmから200 nmと肝臓の類洞内皮細胞小孔からしか漏れ出せない為、静脈注射では肝臓以外の細胞に送達する事は困難。 - N-Acetyl-Galactosamine(GalNAc)法
肝臓で発現するアシアロ糖タンパク質受容体に高い親和性と特異性を示すGalNAcに核酸を結合させて肝細胞への核酸取込みを狙う複合体。但し、肝臓だけにしか送達できない。
当社の抗体・核酸コンジュゲートの構造
- 私達は、 TfR(=CD71)に対する抗体(抗TfR抗体)を用いたオリゴ核酸の送達技術を世界に先駆けて開発しました。
Development of Antibody-siRNA Conjugate Targeted to Cardiac and Skeletal Muscles
Journal of Controlled Release 237, p1-13, 2016.)
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TfRに対する親和性と活性
- TfR(CD71)は、細胞表面ではダイマーとして存在し、且つモノマーとダイマーのコンフォーメーションは異なりますが、当社はダイマーを免疫源として抗体を作製することで、ヒトのTfR(CD71)への効率的な標的化を可能としています。
- 赤枠のクローンは、高親和性抗体の核酸コンジュゲートですが、高親和性抗体が必ずしも強いサイレンシングを示すわけではないため、コンジュゲートを調製して検定する必要があります。当社では、トランスフェリンと競合せず、表のエピトープ A,C,Dに結合する抗ヒトTfR(CD71)抗体を種々取得しています。
抗TfR(CD71)抗体・核酸コンジュゲート核酸送達力
- siRNA による標的 mRNAの発現抑制を、in vitro, in vivoで調査。siRNAがsilencing効果を示し核酸が細胞質に到達した事を示しています。
作用の持続性
- 抗TfR(CD71)抗体断片-siHPRT(10 mg/kg)の単回静脈内投与で腓腹筋、心臓でのサイレンシング作用は長期間持続しています。)
繰返しによるノックダウンへの影響
- 抗ヒトTfR抗体-siRNAおよび抗体断片-siRNAは、ヒト細胞株に毎日添加した場合は飽和が見られるものの、3日間隔での添加では相加効果を示します。
細胞核への核酸送達
- Presenilin-1 (P117L) は、家族性アルツハイマー病で見出される変異として知られています。 Presenilin-1 (P117L) donor oligonucleotideを抗TfR抗体断片に結合させで細胞に導入することにより、アルツハイマー病モデル細胞を作製した例を示します。
PAD疾患モデルマウスにおける治療効果
- 末梢動脈疾患(PAD)は、加齢、肥満、動脈硬化、糖尿病等によって、下肢血管の血流が低下することによって発症します。骨格筋が障害を受け、歩行時に痛みを感じる間欠性跛行、更に進行すると安静時疼痛、下肢切断に至る場合もあります。
- マウスに、大腿動脈結紮手術(FAL)を行うことで、PADに類似する骨格筋障害を持つ動物モデルを作製し、これに抗TfR抗体断片-siRNA(標的遺伝子は、ミオスタチン) を40 μg/週/腓腹筋に筋肉内投与し、4週間後に走行距離を測定しました。
- 結果:抗CD71抗体-ミオスタチン標的siRNA コンジュゲートの投与により、腓腹筋のミオスタチンmRNA発現が72%減少し、筋量が17%増加しました。さらに、本コンジュゲートを投与した群では、未投与の群に比べ、走行距離が有意に向上しました。これらの実験データは、このプラットフォームがPADだけでなく、他の様々な筋疾患にも応用できる可能性を示唆しています。
核酸(ペイロード)のバリエーション
- コンジュゲートする核酸は、細胞質で機能するsiRNAだけでなく、核で機能するアンチセンス核酸、或いはゲノム編集核酸も可能です。
核酸デリバリーの事業展開
- 抗TfR抗体(抗体断片)・核酸コンジュゲートのライセンス提供
- 抗TfR抗体(抗体断片)・核酸コンジュゲートを用いた創薬展開
- 当社のヒト化抗hTfR抗体の提供
- 共同研究(パートナー募集中)
- Payload:mRNA、RNA/ゲノム編集オリゴ、PMO、ASO、siRNA
(PMO = Phosphorodiamidate morpholino oligomers ) - 弊社技術
- 核酸分野
- siRNAデザイン
- LNP試料の核酸定量
- 内包率測定
- 核酸へのリンカーの縮合
- 抗体分野
- 抗体の断片化
- LNP試料への抗体修飾
- マウス、ラットモノクローナル抗体の可変領域の塩基配列解析及びヒト化
- パートナー様から受領した抗体と核酸の結合
- 核酸分野
- Payload:mRNA、RNA/ゲノム編集オリゴ、PMO、ASO、siRNA
抗体核酸コンジュゲートの新たな展開
- 標的臓器の拡充
- ウイルス感染症への応用
- ゲノム編集への展開